小林秀雄·1902–1983·日本
「美しい「花」がある、「花」の美しさというようなものはない」
この言葉の背景
昭和17年、小林秀雄が能『当麻』の観劇を経て書いた評論「当麻」の有名な一節である。観念として抽出される「花の美しさ」などというものはなく、ただ目の前に咲いている一輪の花があるだけだ ― 美学の観念語を一撃で退け、対象に即して見る批評の姿勢を宣言した。戦時下に書かれた小編だが、戦後の『本居宣長』へとつながる彼の方法論の中核がすでにここにある。日本近代批評の古典句として、以後の文学・美学の教育で繰り返し引かれた。