紫式部·973頃–1019頃·日本(平安)
「善きも悪しきも、世に経る人のありさまの、見るにも飽かず、聞くにもあまることを、後の世にも言ひ伝へさせまほしき節々を、心に籠めがたくて、言ひおき始めたるなり。」
この言葉の背景
蛍巻、光源氏が玉鬘に物語の存在意義を語る「物語論」の一節。善いことも悪いことも、この世を生きる人のありさまの、見ても見飽きず、聞いても聞き流せないことを、後の世にも伝えたい ― その思いを心ひとつに籠めておけなくて、物語は書き始められるのだ、という。作中人物の口を借りて、物語という営みそのものの弁明を物語の内側に書き込んだ、日本文学最初期の文学論である。本居宣長の「もののあはれ」論も、この段を拠り所のひとつにしている。
出典と確認メモ
5件- 文脈二次資料で確認済み要旨訳
要旨訳: 長保から寛弘年間、中宮彰子に仕えた紫式部が綴った『源氏物語』帚木巻、雨夜の品定めをめぐる語りのなかの一節。ありふれた出来事のなかに、言い尽くしようもなくあはれを催すものがあり、それでもなお人はそうした...
一次資料を開く源氏物語 帚木 (第二帖) の本文。雨夜の品定めの場面 (光源氏・頭中将・左馬頭・藤式部丞による女性論) と、'世にありぬべき事の中に...' の一節を含む後半...
- 抜粋原典で確認済み定本確認済み
定本確認済み: 善きも悪しきも、世に経る人のありさまの、見るにも飽かず、聞くにもあまることを、後の世にも言ひ伝へさせまほしき節々を、心に籠めがたくて、言ひおき始めたるなり。
一次資料を開く第三章第二段 物語論: 『その人の上とて、ありのままに言ひ出づることこそなけれ、善きも悪しきも、世に経る人のありさまの、見るにも飽かず、聞くにもあまることを、後...
- 出典原典で確認済み定本確認済み
定本確認済み: 出典表記 '『源氏物語』帚木巻(雨夜の品定めの前後、長保〜寛弘年間、1000-1008頃に成立)' の書誌 attribution は概ね正確 — 『源氏物語』全...
一次資料を開く源氏物語 第2帖 帚木巻、雨夜の品定めの段の存在は学術 consensus で確定。philoglyph pullsource の '帚木巻(雨夜の品定めの前後...
- 出典原典で確認済み定本確認済み
定本確認済み: 『源氏物語』蛍巻・物語論の段(1000年代前半成立)
一次資料を開く第三章第二段『源氏、玉鬘に物語について論じる』(WebFetch 2026-08-07)
- 引用原典で確認済み定本確認済み
定本確認済み: いづれの御時にか、女御更衣あまたさぶらひたまひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり
一次資料を開く桐壺巻 第1章第1段 (01-01)。原文: 'いづれの御時にか 女御更衣あまたさぶらひたまひけるなかに いとやむごとなき際にはあらぬが すぐれて時めきたまふ ...